特集!事件・事故報道

N○K国内番組基準第二部第二章第二項「事件・事故報道」より

  1. 呼称と人権
  2. 実名と匿名
  3. 少年犯罪と教育事件新着です
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1・呼称と人権
N○Kは、1984年から、他社に先がけて犯罪報道での名前の「呼び捨て」を原則としてやめ、「肩書き」の他に「容疑者」「被告」などの呼称をつける方針で取材・編集にあたっている。人権尊重の立場を重視するとともに、活字メディアに比べて放送が視聴者の感性に強く訴える特性を考慮した結果によるものである。

ニュースの内容によっては判断が難しい例もあるが、あくまで人権尊重を第一義的に考え、不公平な取り扱いとならないよう配慮すべきである。

一応の原則は次のとおりである。

逮捕以前
令状請求、家宅捜索、書類送検、任意取り調べの場合は、「肩書き」か「匿名」。ただし、病気などで逮捕を免れている場合は、「容疑者」を使うケースもある。

 
逮捕、指名手配など(起訴以前)
「容疑者」または「肩書き」。ただし、「肩書き」を使う場合も、原稿の最初の部分で一度は「容疑者」を使う。肩書きのない一般人との不公平を避けるためである。「肩書き」は、汚職事件など地位を利用した犯罪など、「肩書き」で伝えたほうがわかりやすい場合に使用する。また、「肩書き」自体がニュースである場合もある。

起訴・公判中
原則として「被告」。場合により「肩書き」。

このほか、「不起訴」「略式起訴・略式命令」「有罪判決」「無罪判決」「控訴・上告」「刑確定」「執行猶予」などの細かい項目ごとに呼称を定めている。取材現場のハンドブックなどを参照して報道にあたってほしいが、「○○容疑者」「○○被告」さえつければよいというのではなく、あくまで人権尊重を念頭に置いた取り扱いが望まれる。

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2・実名と匿名
前述の容疑者の「呼び捨て廃止」実施の時期に合わせて、マスコミ各社の事件報道は、人権尊重の立場から匿名の取り扱いが増えはじめた。一方、こうしたマスコミの姿勢を利用する形で、警察当局などの「匿名発表」も増加する傾向にあり、「報道の自由」にかかわるものとして、見過ごせない問題となっている。(後述の『匿名発表』についてのアンケート調査参照)

事件・事故報道は、実名が原則である。そのうえで、起こった出来事の内容とその背景、環境などを十分検討した結果、ケース・バイ・ケースで主体的に匿名にするか否かを判断しなければならない。

おもに、次のような事例には、実名か匿名か、十分な検討が必要だろう。

未成年の容疑者(次項で詳述)
精神障害の疑いがある容疑者
最終的には、刑事責任能力の有無により犯算する場合が多い。
身体・精神障害のある被害者
匿名にする場合と、人に知られたくない障害の事実そのものを伏せる
場合など、多様なケースがある。
別件逮捕の容疑者
軽微の犯罪容疑の場合が多く、また、別件逮捕自体が人権侵害に
つながるケースもあるので、より慎重な配慮が必要である。
参考人としての事情聴取。
事件の重大性や参考人の社会的立場、逮捕状請求の見通しなどを
考慮に入れる。
一過性の軽微な犯罪の容疑者、被害者
ただし、微罪でも容疑者の社会的地位や容疑の内容によって社会的
問題になりうることもある。
性犯罪事件の被害者。
ただし、暴行のうえ殺された場合は、殺人事件の被害者として実名
報道することになるが、あくまで本人の名誉を守ることが原則である。
自殺・心中未遂の当事者
また、親が死亡し、子どもが生き残った場合、その将来を配慮するなど、
判断の難しいケースがしばしばある。
暴力団に絡む事件で、報復(お礼参り)を受けるおそれのある関係者。
『匿名発表』についてのアンケート調査から(1992年12月)
考査室と報道局では、捜査機関の『匿名発表』の実態と対応策を探るため、全国の放送局と社会部、警視庁クラブの合わせて55の取材現場を対象に、アンケート調査を行った。

●半数以上の28の現場が「匿名発表が増えている」と答えている。

●大半の局が、匿名発表をめぐって警察などの公権力と衝突しているが、強い抗議にもかかわらず、警察などが態度を変更した例は少ない。

●このような匿名発表をの増加傾向について、大半の局が、「人権尊重の意識が社会全体に高まっている中で、警察が独自の判断で事後のトラブルを避けようとしている」と分析している。

●これに対してほとんどの局が「実名か匿名かは、報道機関が自主的に判断するものであることを、機会あるごとに記者に周知徹底している」と回答した。また、大半の局が、納得できない匿名発表に対しては、N○K単独、または記者クラブとして“申し入れ”や“抗議”を行い、警察など公権力との間に緊張感を保つよう指導していると回答している。

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3・少年犯罪と教育事件
少年法第61条により、犯罪容疑者である20歳未満の少年の実名と写真は報道しないのが、原則である。未成熟でまだ思慮の浅い少年に対しては、社会全体が保護の立場に立って、再起の機会を閉ざさないというのが、法の趣旨である。

新聞協会では、1958年(昭和33年)に『少年法第61条の扱い方の方針』を決め、犯罪容疑者の少年が逃走中で、さらに放火・殺人など凶悪な犯罪が明らかに予想されるなど、少年保護よりも社会的利益を守ることを優先する特殊な場合は、法の例外とすることを打ち出した。しかし、現実にこの例外規定が適用されたことはない。

<参考> 少年法 第5章 雑則  
記事等の掲載の禁止)

第61条 家庭裁判所の審判に付された少年又は少年のとき犯した罪により公訴を提起された者については、氏名、年齢、職業、住居、容ぼう等によりその者が当該事件の本人であることを推知することができるような記事又は写真を新聞紙その他の出版物に掲載してはならない。

 
しかし、1989年(平成元年)3月、東京・足立区で起きた女子高生コンクリート詰め殺人事件では、ほとんどのマスコミが法を守り氏名などは伏せたが、容疑者の少年たちの目隠しをしただけの顔写真などを掲載した例が一部あった。これら一連の報道は、事件の凶悪性や特異性を強調して、『本人と推測できる』報道に踏み切ったものだが、少年法に触れることを辞さなかった犯罪報道の公益性とは何だったのか、あらためて問題を投げかけた。

少年犯罪や校内暴力などの教育的事件は、次のような点に注意する必要がある。

少年法第61条には罰則規定がないが、これは報道の自由を保障し、報道機関の良識ある判断を期待したものであり、それだけに法を守る責務は重いことを銘記すべきである。
氏名を伏せた場合は、学校名や地域名も詳しく書かないように注意する。「東京多摩地区の中学2年生の女子」で十分である。
ただ、校内暴力など問題が一学校にとどまらず地域や社会の問題となる場合や、学校の指導に重大な責任があるときなどは、校名を報道することもありうる。
事件の背景を知るうえで必要な第三者への周辺取材でも、できるだけ容疑者の少年の氏名を表面に出さないよう努めるなど、細心の配慮が必要である。少年保護の精神は、取材面にも及ぶ。
海外諸国で少年として扱われる年齢は16歳から20数歳までさまざまだが、海外の犯罪報道をそのまま持ち込むのではなく、国内の少年の扱いと整合性が欠けることのないよう十分配慮する。

 

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